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氷野杜涼一による創作日記っス。
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 「「「「「いらっしゃいませぇ!!」」」」」

 居酒屋の入り口で、店員が元気よく挨拶をして、深々と頭を下げた。

 アニャホヘト人は五人の頭を次々と、持っていたナタで容赦なく叩き割った。

 アニャホヘト人にとって、前に立った人間が頭を下げることは、「殺してください」の意味になるのだ。
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 「こんにちは」

 日本人が挨拶のために、深々と頭を下げた。

 すると。

 アニャホヘト人は日本人の頭を、もっていたナタで容赦なく叩き割った。

 アニャホヘト人にとって、前に立った人間が頭を下げることは、「殺してください」の意味になるのだ。
 フラッシュ暗算世界名人が死んだ。

 顔面は赤紫にうっ血し、真っ赤に充血した眼球が半分飛び出すほどの、鬼気迫る表情で机に突っ伏していた。

 どうやらフラッシュ暗算の最中に死んだらしい。

 世界名人の死体のかたわらには、天才殺人者かからの挑戦状がおかれていた。

 日付は三日前。

 挑戦状の内容は、フラッシュ暗算世界名人の実力を試したいとのことだった。

 その天才殺人者の魔の挑戦を受けたがために、世界名人は死んだのだ。

 フラッシュ暗算の 機械のとなりには「VSOP」のボトルが置かれている。

 機械には、最後のカードらしい「XO」が点滅していた。

 探偵は短くなったタバコをケータイ灰皿でもみ消しながら、殺害方法を推理する。

 「殺害方法はわかった」

 探偵は目を閉じた。

 「世界名人は天才殺人者の挑発を受けて、まるまる三日、休憩なしのフラッシュ暗算に挑戦した。72時間の持久暗算。ばかばかしいが、世界名人のプライドが逃げることを許さなかった…」

 探偵ははきすてる。

 「そして、挑戦時間の最後、精神的な限界ギリギリのところで、『XO』が機械に映し出される…」

 探偵の眉間がいまいましげに谷をつくる。

 「あれは『エックスオー』ではなく『かけるゼロ』…」

 うっすらと探偵のまぶたがもちあがる。

 「最後の最後で、世界名人のそれまでの72時間に行なったすべての暗算が水泡に帰した…」

 探偵はため息とともに、タバコを一本口にくわえ、火をつけた。

 「三日間一瞬たりとも気を抜くこともできず、まばたきすらろくにできない超絶緊張。その最後に奈落に突き落とされるような絶望を感じたはずだ。直後に激怒し、そして頭の中の血管が切れた…。顔のうっ血と眼球の毛細血管が破裂していることからも明白だ…」

 そして探偵は、タバコを深く吸い込んだ…。

 その後の検死で世界名人は、探偵の推理どおりクモマッカ出血で死亡しているのが確認された。

 天才殺人者による恐るべき連続殺人の幕があがった事件だった…。
 殺人者は芸術家で。

 探偵は批評家に過ぎない。

 そんな一文を残した作家がいた。

 天才殺人者は机の上に三枚の写真をゆっくりとならべる。

 ①探偵。

 ②直感探偵(美少女)。

 ③名探偵。

 彼、彼女はどのような批評家たりえるのだろうか…。

 対決のときは近い…。

 天才殺人者はほくそえんだ…。
 名探偵は悩んでいた。

 自分の行く先々で事件が起こる。

 そして自分が解決することになる。

 まるで自分が事件を引き寄せているかのように感じられて仕方がないのだ。

 名探偵は出かけるのを自粛することにした。
 探偵は考える。

 犯罪とは「罪」ではあるが「悪」ではない。

 反社会的といえば社会悪ともいいかえられるが…。

 だが、犯罪は「可能事」なのであって「不可能事」ではない。

 要するに犯罪は、衝動的であれ、理性的であれ、

 「(もし捕まれば)一定期間の法的不自由を受け入れてのみ実行できる反社会的行為」

 となる。

 文字通り「死ぬ気になればなんでもできる」わけか…。

 探偵はタバコを深く吸い込んだ…。
 「犯人はお前だ!」

 「いや、犯人はこいつだ!」

 「いやいや、犯人はそいつだ!」

 「いやいやいや、犯人はあいつだ!」

 「ん? オレが犯人か?」

 探偵は混乱した。
 「犯人はお前…か?」

 探偵は推理に自信がなかった。

 「だいたいそんな感じス…」

 犯人はうなずいた。
 直感探偵(美少女)は、直感で人を判断できる。

 今日もまた、転校したばかりのクラスで、直感探偵は直感で人を判断してしまう。

 「あなたは頭はいいけど変態」

 「あなたは美人だけど性格ブスね」

 「あなたは心がゆがんでるから太るのよ」

 「あなたはあの人が好きなのね。でもあの人は、その人が好きみたいだわ」

 直感探偵は嫌われる。
 直感探偵(美少女)は、ときどき政治家の演説を聞く。

 うそね…。

 これも、うそ…。

 それも、うそ…。

 また、うそ…。

 やっぱり、うそ…。

 うそだらけね…。
 直感探偵(美少女)は、直感で人を判断できる。

 ある日、イイ男が声をかけてきた。

 「キミかわいいね」(これは本心…)

 「オレいまフリーなんだ」(うそ。さっき彼女とケンカしたばかり…)

 「今夜あいてる?」(ただの暇人のナンパね。下心まるだしだわ…)

 直感探偵は、イイ男を無視して歩き去った。

 直感探偵は下心のないナンパがないことを、いまだ知らない…。
 直感探偵(美少女)は直感で事件を解決する。

 猛吹雪が渦巻きコテージから出られそうにない夜のこと。

 宿泊客が食堂に集まって歓談していた。

 「今夜、殺人事件が起こるわ!」

 直感探偵の直感が炸裂する。

 「事件はあなたの部屋で起こり、第一発見者のその人が一時的に犯人と疑われるが、実際はあの人が犯人で、その動機は妹を殺された復讐なのよ!」

 殺人事件は起こらなかった。
 「犯人はお前だ!」

 探偵が、旅館の女将を指し示した。

 そのとき。

 地元の巡査があわてて駆け込んできた。

 犯人が自首した報告だった。
 殺人は日常茶飯事だ。

 理由さえあれば人を殺すことすら自分に対して許すのが当然のように描かれている。

 ミステリによる洗脳は着実に進んでいる。

 探偵はほくそえんだ。
 警察は無能だ。事後処理役でしかない。

 探偵だけが事件を解決できる。

 事実。警察の検挙率は年々下落している。

 ミステリによる洗脳は着実に進んでいる。

 探偵はほくそえんだ。
 いったいだれがこのような恐ろしい殺アリを行えるというのだろう?

 巨大ななにかが老メスアリを押しつぶしていた。

 すべての体液と内臓が死骸のまわり溢れだし、いまはもう乾ききっていた。

 アリにこのようなことができるはずがない。

 ましてなにかの動物とも思えない。

 食べられるならわかるが、無駄に押しつぶすことなどしない。

 いったいどうすればこのような残酷な殺アリができるというのだろう?

 HEYHEY!

 みんな知ってるかい?

 自分で死ぬといろいろ悲惨なメにあうぜ!

 飛び降り自殺は危険だぜ!

 お前の魂、視界もカラダも、ぜったい硬直!(フォーエバー!)

 未来永劫うごけねぇ!(フォーエバー!)

 …そんな死後の人生たえられるかい?

 HEYHEY!

 みんな知ってるかい?

 自分で死ぬといろいろ悲惨なメにあうぜ!

 探偵はテレビを見る。

 日々ニュースで流れる事件事故災害…。

 まるで

 「この世にはあなたより不幸な人間がこんなにたくさんいますよ」

 といわんばかりに…。

 探偵は目を閉じ、タバコを深く吸い込んだ。
 男は現実に絶望し、みずから死を選んだ。

 そして男は死後の世界で目覚めた。

 死後の世界は死んだ人間たちであふれていた。

 そこにも学校があり、会社があり、民主政治だった。

 死後の世界も社会システムは死ぬ前の現実と同じだった。

 男は死後の世界に絶望し、みずから死を選んだ…。
 「まず、第一の殺人…」
 探偵は語りだした。
 「遺体の発見は深夜。公園の片隅に置かれている自動販売機の明かりに照らされて倒れていた。外傷はない。手にはペットボトルのスポーツ飲料が飲みかけのまま握られていた。そして、第二の殺人…」
 探偵はぐるりと視線をめぐらせる。
 「遺体発見現場は繁華街のはずれにある路地裏。自動販売機の前に倒れているのを朝刊を配達中の新聞配達員に発見される。こちらも外傷はなし。手には缶コーヒーが飲みかけのまま握られていた。そして最後、第三の殺人…」
 探偵の研ぎ澄まされた眼光が、その場の空気を凍らせる。
 「いま目の前に倒れている人物に外傷はないものの、脈はすでに停止しており、呼吸もしていない。そして目の前には自動販売機。手には炭酸飲料が飲みかけのまま握られている。だが…」
 探偵はふいに肩の力を抜き、天を見あげる。
 「どの飲み物からも毒は検出されていない…」
 満天の星がうつりこむ眼球にまぶたを落とす。
 「しかし犯人はわかっている。それはお前だ…」
 探偵はつぶやく。
 「自動販売機…」
 自動・販売機という名前の男は、その場にひざをついた。


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プロフィール
HN:
氷野杜涼一(ヒノトリョウイチ)
性別:
男性
趣味:
読書と創作
自己紹介:
 第7回スニーカー大賞最終選考候補者のひとり。
 目標は角川スニーカー文庫から本をだすこと。
 ライトノベル作家めざして鋭意創作中っス。
 気軽にコメントくださいっス。
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