恐怖劇場 第１話 不老一家調査レポート

　ある都市の郊外の古くからの住宅地に、ある一家が住んでいる。

　その一家はある日突然姿を現した。

　その一家と付き合いのある近隣住民も、いつの間にか続々と現れ、地域に溶け込んでしまった。

　その一家と、一家と付き合いのある住民はここ数十年、年をとっていない。

　そう。

　彼・彼女らは「不老」なのである。

　そのため、永遠の命を求める大富豪や裏社会のボス、果ては海外マフィアのドン、さらには日本国などからの調査官も幾度となく送り込まれている。しかし、彼・彼女らは「不老」であるにもかかわらず、日本人的なあくまで日本人的な平凡すぎる日常を、飽くことなく繰り返しているだけ。身内の旅行先で自分たちが「不老」であることを自覚している発言も聞かれたこともあるが、そのことを殊更重要視してはいないようであった。

　その一家の家族構成はやや難解で、一見して男・女・男の三兄妹にも見えなくもないが、実は女・男・女の三姉弟であり、長女の子供が末っ子のように見えているだけである。

　不思議なのは彼・彼女らの名前である。

　魚貝類の名前なのである。

　戸籍登録上の問題はない。だが、姓も海に関しているものであることから、明らかに作為的だと思われる命名の仕方である。

　ようするに、平凡な日常を送る一家族にしては、その点だけが過剰なのである。

　その一家が「不死」であるかは謎であるが、「不老」であることは間違いない。

　今後も「不老一家」の調査は継続していく。